保険

死亡保険金受取人を誰にする?

2022.10.19 FP 新井 明子

保険金の受取人は誰にしておくのがベスト?
相続のことを考えると色々なことを配慮する必要があります。
そして受取人などの変更手続きは忘れずに……

1. 死亡保険金の非課税規定

保険に加入している人が亡くなり相続人が死亡保険金を受け取った場合、その死亡保険金には相続税の非課税枠があります。(相続税法第12条)
非課税限度額は、500万円×法定相続人数です。

この法定相続人数には、相続放棄をした人も含めます。

相続人ではない人が死亡保険金を受け取った場合には非課税規定の適応はありません。

そして相続人ではない人が受け取った死亡保険金も相続税の申告の際は、法定相続人と一緒に申告する必要があります。

預貯金にはこのような非課税枠はありませんので、貯金の一部を生命保険にしておくことは、相続税対策になります。

他に死亡退職金も死亡保険金と同じく非課税枠があります。(法定相続人数×500万円)

会社オーナーの方などは、この死亡退職金を保険を使って用意することは可能だと思います。

この場合退職金規定を作っておくことをおすすめします。規定がないと死亡退職金の受取人は法定相続人となり、だれが受け取るかでもめることも考えられるからです。

後継者が決まっている場合は、後継者にしておくことが望ましいです。

2.保険金受取人は誰でもなれる?

以前は保険金受取人を特定の人ではなく法定相続人としているケースもありましたが、今ではほとんどありません。保険は相続人固有の財産であり被相続人の想いを伝えるものと考えればやはり誰かを受取人に指定したほうが望ましいと思います。

しかし保険金受取人は誰でもなれるわけではありません。

保険会社により規定が違いますが、モラルリスクから赤の他人を受取人にすることは考えられません。

基本的には2親等以内の親族になりますが、貯蓄性の高い一時払い商品のみ3親等まで認めている保険会社や、国や地方公共団体や公益社団法人などを受取人に指定できる会社もあります。

以前から内縁関係は住民票が同じであることを証明すれば受取人になれますし、最近では同性パートナーを受取人にできる会社もあります。

いずれにしてもモラルリスク上問題ないかを保険会社や保険代理店の担当者が判断し必要書類を提出することにより手続きできます。

保険に加入する目的は、やはり残したい人に保険金を残すことだと思いますが、親族がいない方や事情があり親族には残したくない人もいます。

そういった場合に、国や公益法人に残せることは柔軟性があってとてもいいと思います。

3.死亡保険金受取人の変更

死亡保険金受取人が被保険者より先に亡くなることはあります。その場合速やかに死亡保険金受取人を変更する必要があります。

死亡保険金変更の手続きは保険会社に所定の書類を提出することにより完了します。変更は何度でもできます。

基本的には変更を行った場合には保険証券に表示します。

死亡保険金受取人が死亡保険金支払事由の発生以前に死亡していた場合は、その法定相続人を死亡保険金受取人とします。

この場合、人数が少なければ問題ありませんが、法定相続人が従兄弟のみで全国に住んでおり、行方がわからないなど全員の同意(印鑑証明書)が揃わないと支払できないことが多いです。一人の従兄弟を死亡保険金にしていしておけば支払われていたのに手続きを怠ってしまったがために支払われないこともあります。

死亡保険金受取人の変更は忘れがちな手続きです。親御さんが亡くなって相続の手続きをする際にはご自身の保険のことも確認しましょう。

4.遺言で保険金受取人を変更できるか?

保険会社の約款をみますと、遺言で死亡保険金受取人を変更できる旨の記載があります。

約款の中には以下の事が書かれていることがほとんどです。

  • 保険契約者は、死亡保険金の支払事由が発生するまでは法律上有効な遺言により死亡保険金受取人を変更することができます。
  • 死亡保険金受取人の変更は被保険者の同意がなければ効力を生じません。
  • 遺言による死亡保険金の変更は、その遺言が効力を生じた後、保険契約者の相続人が会社に通知しなければ会社に対抗することはできません。

変更前の死亡保険金受取人に保険金をお支払いしたときは、そのお支払い後に変更後の死亡保険金受取人から保険金の請求を受けても保険会社は保険金を支払ません。

保険金受取には死亡診断書が必要で、病院や警察などで死亡診断書や検案書は親族しか受け取ることができないのが通常です。

遺言により受取人が第三者になっている場合は受取の手続きには手間がかかることになります。

2親等以内の親族がおらず、保険会社の規定上保険金受取人になることができない場合などはこのような遺言を使っての死亡保険金受取人の変更は意義があるかと思います。
例えば、配偶者子どもがいない方で一部の兄弟と姪、姪の子供に500万ずつ保険金を渡したい場合、3親等まで保険金受取人を指定できる会社では、兄弟に500万円、姪には姪の子供の分を含めた1,000万円分を受取人指定します。(姪の子供は4親等)

そのうえで遺言で姪に渡した分のうち500万円は姪の子供に渡すことを記載しておけば想いが通じると思います。

姪は自分の子供に分けないことはないと思いますが、きちんと想いを残すことは大事です。

5.高度障害保険金・リビングニーズの課税について

さて、生命保険金は死亡時だけでなく入院手術を受けた場合、高度障害や障害者認定を受けた場合、余命6ヶ月と診断された(リビングニーズ特約)場合にも支払われます。

入院手術はそれ程高額になるケースは少ないと思いますが、高度障害やリビングニーズ特約は高額になるケースが多いと思います。

それでは高度障害保険金はどういった状態で支払われるのでしょうか?

  • 両眼の視力を全く永久に失ったもの
  • 言語またはそしゃくの機能を全く永久に失ったもの
  • 中枢神経系・精神または胸腹部臓器に著しい障害を残し終身常に介護を要するもの
  • 両上肢とも、手関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
  • 両下肢とも、足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
  • 1上肢を手関節以上で失い、かつ1下肢を足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
  • 1上肢の用を全く永久に失い、かつ1下肢を足関節以上で失ったもの

高度障害保険金は被保険者に支払われるものです。受け取った保険金は被保険者の財産となり被保険者が亡くなった場合には残った金額が相続財産になります。

高度障害保険金としては受け取らず被保険者が亡くなったあと相続人が受け取れば生命保険金の非課税枠が使えますし、もし被保険者に借金が多くて相続放棄しなくてはならない場合にも死亡保険金は受け取れます。

リビングニーズ特約も同じことが言えます。余命6ヶ月と診断されて保険金を前払いして受け取った場合、受取時は非課税ですが、被保険者が亡くなったあと残ったお金は相続財産です。リビングニーズで生前受け取らず、死後受け取れば死亡保険金の非課税枠が使えます。

しかもリビングニーズ特約には利息が引かれることも覚えておかなくてはなりません。

リビングニーズの請求日から6か月間の利息および保険料を差し引きます。

保険会社によっては要介護状態になったら保険金を支払う特約(ナーシングニーズ特約)もありますが、こちらも平均余命までの期間で予定利率で割り戻した金額が保険金から差し引かれます。

治療のために、生きるために必要な高度障害保険金やリビングニーズ特約、受け取る前に検討することも必要です。

まとめ

家族のために良かれと思い加入した生命保険がトラブルを生むなんてことは避けたいです。

手続きは慎重に、そして名義変更などは忘れないようにしないといけません。

この記事を書いた人

FP 新井 明子

FP 新井 明子

保険代理店 株式会社ライフ・アテンダント代表取締役
日本FP協会会員
DCプランナー
MDRT終身会員
一般社団法人相続サポート協会理事
著書「家族で話すHAPPY相続」プラチナ出版

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