地積を確定するときに必要な隣地境界線とは?
2021.02.18 長尾 睦子
隣地境界線とは敷地と敷地の境目を示す線のことです。
上の写真のような印を見たことはありませんか?これが境界を示す杭です。そしてこの杭(コンクリート・金属プレート・木)などの目印と目印を結んだ線のことを境界線と言います。実際には線があるわけではなく、塀や垣根によって仕切られていることが多いので、普段は気にすることはありませんが、相続で引き継いだ土地を売却して所有者が変わる際や住宅の増改築の際は問題になりますので、きちんと確認をしておきましょう。
1. 現在の隣地境界線
土地の境界線は、明治時代などは縄や歩幅で測った地域もあり、登記簿に記載されている地籍(面積)と実際の面積に違いが出る場合があります。また、昭和40年代の宅地造成が流行っていたころの図面も整合性の取れていない物が多いです。過去の記録をしっかりと確かめる必要性があります。
また、正確に登記されていても年数がたち、境界線が埋もれたり、地震で地形が歪んだりして不明瞭になる場合もあります。敷地面積により固定資産税の税額・建蔽率や容積率が決まるので、実測を行う場合は境界線を明確にしなければなりません。境界線がずれていた場合でも、善意の第三者の場合は20年が経過すると現状が優先されてしまいます。このような理由から日常から杭の確認が必要となるのです。
2. 実際の確認作業
実際の確認作業は、測量士や土地家屋調査士が現況を調査し現況図面を作成します。国土地理院の定めた三角地点からの距離を測り、地点を確定します。
その後以下のように利害関係者(隣接する所有者)の立ち合いの下、合意の上で境界を決定します。実際の確定はお互いの合意事項になります。
下記の図の赤丸が示すように境界杭は複数あります。立ち合いをお願いするのは地点ごとに違い、複数の所有者との確認作業となりますので時間がかかります。
また、土地は接道義務があるため、道路などの官有地との境界を明確にさせるために管轄する役所の担当者立ち会いのもとで測量をする「官民査定」と民有地同士の立会いの下で測量する「民民査定」があります。
- 所有者+役所+Aさん
- 所有者+役所+Bさん
- 所有者+Aさん+Dさん+Cさん
- 所有者+Bさん+Cさん+Eさん
合意できれば、境界の確認書(協定書)へ全員が署名捺印し、必要な場合は新たな境界標を埋設します。実測面積と登記簿面積が異なる場合は、地籍更正登記という手続きで登記面積を書き換えます。
3. 境界塀の所有権
平成に入ってからはトラブルを避けるために自分の敷地内に塀を立てることが多くなりました。しかし、昭和の宅地造成期は中心線上に建てられることが一般的でした。
どちらの費用で立てたか、境界線上なのか内側なのか、所有権がどちらにあるかが判然としない場合があります。塀の設置工事の領収書などの反証がない限り共有財産と考えるのが一般的です。
老築化し、建て替えをする場合は必ずお互いの合意の上で行う必要があります。共有物か単独物かで費用負担も変わってきます。接半となる事例は少ないのですが、費用が発生することなので、境界線の確認をした際に一緒に塀の所有権を確認することをお勧めします。
4. 登記簿の保管場所
登記簿は登記所に保管されていて、だれでも閲覧や写しの交付は可能です。心配なら時間のある時に確認をしてみましょう。隣地境界線の確認作業は売買時にはするものだと認識しておいてください。
地積測量図が不明瞭なことはまれですが、自然災害が多い昨今です。気が付かずに売却をしても、後日損害賠償を求められることがあります。しっかりと確認をして隣人トラブルにならないように気を付けましょう。
さいごに
売買の現場では普段気にしていないことも多々確認しなければなりません。事前の対策が最も有効となります。所有者が変わるということは認識も変わります。都心部で境界線があいまいな場所は少ないと思いますが、数センチでも税金が変わるので、しっかり確認をしてください。
この記事を書いた人
長尾 睦子
マンションの維持管理の専門紙「アメニティ新聞」の発行人
賃貸経営管理士
福祉住環境コーディネーター